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新刊紹介
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ハチはなぜ大量死したのか
ローワン・ジェイコブセン著 中里京子訳 福岡伸一 解説
株式会社 文藝春秋 2009年1月30日 \1905+税 339pp
 北米やヨーロッパ諸国を中心に,2006年頃から忽然とセイヨウミツバチの働き蜂が巣から姿を消し,巣が壊滅してしまう蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder)という現象が発生している.CCDと称されるその異変は現在も続いている.

 本書は,アメリカでのCCDの発生状況と原因について解説したものである.CCDの原因として,ミツバチヘイギイタダニ,アカリンダニ,殺ダニ剤(フルバリネート,クーマホス(有機リン剤),ハチノスムクゲケシキスイ,アメリカ腐蛆病菌,ノゼマ病微胞子虫病,イスラエル急性麻痺病ウィルス,カシミールミツバチウィルス,サックブルードウィルス,翅変形病ウィルス,ネオニコチノイド系農薬(イミダクロプリド),抗生物質,都市化,温暖化,グローバル化,栄養不良等々多種多様な要因があげられている.しかし,今だに解決策には結びついておらず,米国の養蜂業は,存続自体が危機的な状況に陥っている.

 著者は,CCDを惹き起こすプロセスとして,近年のアメリカの養蜂を取り巻く経済的,社会的環境が複合的に作用していることを示唆している.アメリカでは2000年代からアーモンドの爆発的な生産が行われるようになった.その受粉のために全米のミツバチが駆り出された.ミツバチは長距離を自動車で移動させられ,アーモンドという単一作物の受粉のみに従事させられた.不自然な時期に活動させるための栄養としての単糖類,感染症予防のために抗生物質が投与された.さらに,アーモンド生産のためのミツバチの需要は,驚くべきことにオーストラリアからのミツバチの輸入を許可した.こいう状況の中でミツバチはストレスが促進する衰退現象や自己免疫欠乏症を患い,また,全米のミツバチが同じ場所に集結させられたことにより,外来性を含む感染症や寄生虫を全米に媒介させる結果になったのではないかと考えられている.ミツバチは集団で高度な社会性を営む昆虫である.ミツバチを加害するダニを殺すための殺ダニ剤や近年普及しているネオニコチノイド系農薬によって,ミツバチの社会的な知性が乱され,働き蜂が女王や幼虫,蜜を残したまま脱出してしまう異常行動をとることも十分考えられる.

 セイヨウミツバチにおけるCCDの発生は,先進諸国の農業や自然・社会環境のあり方に対する警告のように思われる.
(中野敬一)
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