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新刊紹介 |
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「減るバッタ 増えるバッタ −環境の変化とバッタ相の変遷」
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内田正吉 著 |
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(資)HSK 2005年12月25日 1200円(税別) 変形版 p141 |
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私の子供のころにはまだまだ空地や草原(くさっぱら)があり,トノサマバッタ,ショウリョウバッタモドキ,ショウリョウバッタなどのバッタを捕まえて遊んだ記憶がある.しかし,最近はオンブバッタくらいしか見ることがなく,バッタと接することはほとんどなくなっている.また,バッタはカブトムシや蝶のような人気がなく,逆に衛生害虫のような害がない虫であるためか,まとまった本が出ていなかったように思われる.
本書は,そんな普通の虫であるバッタについて,埼玉県を中心としたフィールドの観察からバッタの分布と環境との関わりをまとめたものである.
内容は5章から構成されている.第1章は減ったバッタとして,クルマバッタ,イナゴモドキそして3種のイナゴ(ハネナガイナゴ,コバネイナゴ、ツマグロイナゴ)をとりあげている.いずれも高度成長期に土地利用や農業政策の変化により生息場所が減少したことが影響している.クルマバッタは,シバ型草原と共に減少したが,飛翔力の強さといわゆる温暖化で分布を新たに拡大している可能性も示唆されていた.イナゴモドキはススキ草原の消失と共に減少し,山地草原のバッタとなった.イナゴは湿性草原や水田に生息しているバッタであり,代表的な生息場所である水田の変化がその生息に大きく影響した.イナゴは一時,有機塩素系殺虫剤の大量散布により著しく減少した.その後,コバネイナゴは増加したが,ハネナガイナゴやツマグロイナゴは減少した.
第2章は増えているバッタとして,マダラバッタをとりあげている.マダラバッタは東南アジアから東アジア南部,オーストラリアにかけて分布するバッタである.1990年代後半から生息記録が増加している.この理由として以前は東京湾の埋立地に生息があったが,近年は河川敷の造成と丘陵地などの宅地造成により内陸部へと侵入し,分布を拡大していると推論している.また,この分布拡大の背景にはいわゆる温暖化が影響している可能性もある.
第3章はすみかから見えてくるバッタの素顔というタイトルで,ショウリョウバッタ,セグロバッタ,カワラバッタをとりあげている.ショウリョウバッタは静止時,後脚を腹部から離して「ハの字型」の姿勢をとる.その原因を著者は次のように摂食行動から考察している.ショウリョウバッタ成虫(特に♀)は,植物量が多い高茎のイネ科植物の葉を食べるが,体が大きいのでイナゴのように直立した茎につかまることができない.そのため,脚を四方に広げることで,重たい体重を分散させ落下する危険性を回避している.セグロバッタは日当たりがよい開けた場所にある低茎と高茎の草本群落が混在している草原に生息する.このような環境は多くの種類のバッタが生息できるが減少しているため,セグロバッタの分布は局限されている.カワラバッタは草のあまり生えない石ころの多い川原に生息する.冠水によって常に撹乱される環境に適応しているが,植物が繁茂すると生息できなくなる.砂利採取やダムによる河川水量の減少により生息域は少なくなっている.
第4章は川原とバッタをテーマに,荒川,利根川における調査によりバッタの分布状況の把握と河川環境の評価を行っている.バッタは陸上性の比較的大型の昆虫で,日中生活し夏から秋に成虫が見られる種が多いため,目視での確認が容易である.また,種によって移動能力に違いがあり,河川環境の評価に利用できる.
第5章はバッタから見える地域の環境として,第1章から第4章までをまとめている.最後に著者は,バッタの調査は地域の環境を多角的に捕らえるための一つの手段になりうると考え,そのためにバッタの種類ごとの生息環境の特徴や分布域の変化,生息環境を改変させた社会的要因などを把握する必要があると結んでいる.
本書は平易でわかりやすい文体とモノクロのバッタや環境写真,分布図で構成されている.目視観察から生息環境の評価とその背景を考察する手法は,私自身が都市の昆虫で行っている方法と似ており大変興味深く,参考にしたいと思う.できれば,バッタの種類ごとの特徴や生息環境を一覧表にまとめ,分布記録や目視観察から推測した仮説なども数量的な根拠を提示し,模式図やグラフ化するとより一層理解しやすいように思う.しかし,生物から環境を考える環境教育や野外観察の手引きとして,役に立つ一冊と思われる.
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(中野敬一) |
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