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新刊紹介
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動物たちの自然健康法 −野生の知恵に学ぶ− 
シンディ・エンジェル著 羽田節子訳
紀伊国屋書店 2003年11月 \2310(税込み、送料別) 366pp
 本書は野生動物が行っている自己治療についてまとめられた本である。動物たちは原因を理解しているわけではないが、薬効成分を含む植物や粘土などを摂食あるいは行動による体温上昇や清潔保持によって自分の健康を維持している。原注からもうかがえるように膨大な文献に基づいて執筆されており、幅広い視野に立つ話題が多く面白い。

 ネコやイヌがイネ科の雑草を食べて吐く行為はしばしば見られるが、この結果として消化器内の寄生虫や毛玉を排除することができる。これは身近な動物が行っている一種の自己治療である。本書ではアフリカのゾウや霊長類をはじめ多くの野生動物の実例を取り上げている。たとえば、ケニア西部のゾウは草食で不足するナトリウムの供給と植物に含まれる毒物を解毒するために洞くつにある岩を集団で食べる。この岩には下剤に使用される硫酸ナトリウムが大量に含まれている。また、病気のチンパンジーが食べるヴェルノニアという植物には腸内線虫の感染予防と腰痛の治療効果があることなどが述べられている。

 著者は動物行動学の研究者であり、事例の大部分は哺乳類と鳥類であるが、他の脊椎動物と昆虫の例も載せている。その中で昆虫に関するウェイトは少なくない。たとえば、ミツバチのプロポリスと蜂蜜には抗菌作用があり、巣の中の腐敗を防止しているが、フィリピンのトウヨウミツバチはヨーロッパ腐蛆病やサックブルード病も防止できる。また、菌類に感染したアリやハエは日光浴を、細菌感染したバッタは暖かい場所へ移動するように微生物に感染した昆虫は積極的に体温上昇を行い、微生物に対抗している。さらにタマバチやハムシ

 モドキ、スズメガ幼虫などは食草の抗菌アルカロイドにより微生物の感染を防御する例が紹介されている。第8章では全編にわたって動物が刺す虫から身を守る方法が示されており、薬効成分のある植物が忌避剤や痒み止めに使用されている。寄生虫対策では、寄生虫におかされた毛虫が健康時には食べない有毒植物を選択して生存率を高める例など大変興味深い事例が紹介されている。

 動物の自己治療の研究は、新しい医薬品開発のみならず、動物園や家畜など飼育下の動物の健康管理と福祉に応用が期待される。動物は自分の健康に絶えず気を配っているが、これは人間社会の健康管理にも反映することができると思われる。

 野外における昆虫の行動には実は自己治療的な意味合いも存在するという新しい発想を示している。害虫の自己治療の仕組みと自己治療を阻害する仕組みを研究することにより今後、新しい防除方法が編み出されるかもしれない。
(中野敬一)
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